NEWS 道路や鉄道が地域をどう変える?「経済効果」を正しく測るための新しい視点

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総合経済

道路や鉄道が地域をどう変える?「経済効果」を正しく測るための新しい視点

道路や鉄道が地域をどう変える?「経済効果」を正しく測るための新しい視点

総合経済学部の寒河江雅彦教授らによる専門雑誌「高速道路と自動車」第68巻12号、2025年の論説が掲載されました。
新しい道路ができたり、新幹線が開通したりすると、私たちの生活は便利になります。しかし、その「効果」はどれくらいあるのでしょうか?実は、単に「便利になった」というだけでなく、地域の経済にどれくらいお金が回り、産業がどう活性化するかを正確に見極めることは、国の政策を決める上で非常に重要です。
この論説では、経済効果を分析するための「2つのモノサシ」を比較し、より信頼性の高い分析方法を提案しました。

1.経済を測る「2つのモノサシ」の違い

現在主流となっている2つの分析手法を整理すると、

    • 「産業連関(IO)分析」:手軽でスピーディーな分析
      • ある産業への投資が、他の産業へどう波及するかを計算する手法です。
      • 長所:シンプルで分かりやすく、素早く「波及効果」を数値化できます。
      • 短所:「価格の変化」や「資源の限界(人手不足など)」を考慮できないため、現実の複雑な動きを捉えきれないことがあります。
    • 「空間的応用一般均衡モデル(SCGE)」:社会全体を見渡すシミュレーション
      • 価格の変動や、人々の需要と供給のバランスまで含めて計算する高度な手法です。
      • 長所:「もし価格が上がったら?」「別の道を使ったら?」といった、複雑なシナリオ比較に強いのが特徴です。
      • 短所:仕組みが複雑で、分析に時間とコストがかかります。

2.「どちらか」ではなく「どちらも」使うのが正解

これまでは「どちらの手法が優れているか」という議論になりがちでしたが、本研究では「2つをセットで使うこと」の重要性を説いています。

    • 短期的・迅速に把握したいときは、手軽な「産業連関分析」を。
    • 長期的な政策や大きな構造変化を見極めたいときは、緻密な「一般均衡モデル」を。

このように目的に応じて使い分け、お互いの弱点を補い合うことで、交通インフラ整備の「本当の価値」がより透明性高く、信頼できる形で示せるようになります。

 

研究の意義:納得感のある街づくりのために

多額の税金が使われる公共交通の整備には、住民や社会が納得できる「確かな根拠(経済的価値)」が必要です。今回の研究は、より精度の高いデータに基づいた「インフラ整備」や「地域振興」を実現するための、大きな指針となるものです。

このように、IO分析は経済活動の波及規模を把握するのに適し、SCGE分析は価格調整と地域間相互作用を通じた厚生や分配の評価に優れている。

高速道路調査会HPのURL:公益財団法人 高速道路調査会
執筆した論説の目次のURL:https://www.express-highway.or.jp/Portals/0/mokuji_2512.pdf

 

出典:『高速道路と自動車』2025年12月号「論説」pp.5~9