NEWS 4/1(金)金城大学 第17回入学式の様子を掲載しました

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4/1(金)金城大学 第17回入学式の様子を掲載しました

 平成28年4月1日(金)に、白山市松任文化会館において、平成28年度 金城大学第17回入学式が挙行されました。
式典では、新入生代表として医療健康学部の與三野央昂さんが、今後の大学生活への抱負を述べました。

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入学式式辞 学長 半谷 静雄

 160401uns5さてこの所、世界はゼロ金利政策やゲノム編集など以前には想像もされなかった正にパラダイムシフトといってもよい状況を迎えつつあります。このような中においても、現在我が国が直面している最重要課題は少子高齢化にあるといっても決して過言ではありません。65歳以上の高齢者の割合は、既に25%を超え、この傾向は今後も加速し、2060年には40%にも達すると予測されています。他方、我が国の平均寿命は男性が80.2歳、女性が86.6歳と、ともに80歳を超えましたが、自立生活が可能な「健康寿命」は男性が71.2歳、女性が74.2歳で、平均寿命との間には実に男性で9年、女性で12年もの格差があります。この期間は当然介護を要し、ご本人はもとよりご家族や自治体にも大きな負担となります。ちなみに、現在国の介護費用は10兆円を超え、医療費の40兆円を加えれば50兆円となり、国家予算の半分以上を占めるに到っております。近江商人の心得に“三方よし「売り手よし、買い手よし、世間よし」”という標語がありますが、健康寿命と平均寿命が等しくなれば、介護の必要もなく、まさに本人よし、家族よし、自治体よしの「三方よし」が可能となり、介護離職もゼロ、1億総活躍社会も夢ではなくなります。

 この所、お年が100歳を超える百寿者の方が急増され、百寿者の方は単に長命なだけでなく、活動的で自立度も高いことが解ってきました。従って、百寿者の長寿の秘密が解れば、健康寿命への手がかりが得られる筈です。そこで昨年、684名もの百寿者を対象にした最長10年にも渡る健康調査の結果が公表され、その血液検査から健康長寿に大きく関わる二つの因子が明らかになりました。ひとつは①慢性炎症の程度で、もう一つは②遺伝子のテロミアの長さです。中でも、健康長寿に最も関係するのは、慢性炎症の程度であることが解りました。炎症といっても、痛みや腫れを伴う急性のものではなく、自覚症状もなく全身性に徐々に進行する慢性の炎症を指します。一例を挙げれば、皆様よくご存じのメタボによる内臓肥満も慢性炎症の原因となります。内臓脂肪細胞から分泌される様々な炎症性の生理活性物質が血管を障害し、脳卒中などを引き起し、健康長寿を阻みます。更に最近、慢性炎症は癌やアルツハイマー病の発症にも関与し、酸化ストレスの原因となることも解ってきました。

 健康長寿に関与することが明らかになったもう一つの因子であるテロミアは、DNAの末端を構成し、DNAの保護や複製に働きます。細胞分裂の度に短くなるため、加齢とともに短縮して、テロミアが極端に短縮すると細胞分裂は停止し、細胞老化や細胞死に到ります。そこで、テロミアの短縮を補うため、テロメレースという酵素が発現して、テロミアは補充されますが、それでも加齢によりテロミアは短くなります。ちなみに、このテロメレースが過剰に発現し、テロミアが短くならないと、癌が生じます。そして、百寿者のテロミアにも、普通のヒトに比べ、テロミアが短くなり難い特性のあることが解ってきました。また、テロミアを含むDNAは、酸化ストレスなど様々な毒性物質によっても傷害され、細胞老化が加速されます。従って、百寿者には、酸化ストレスなどによる傷害を防ぐ特別の防御機構がある可能性があり、現在この探求が精力的に進められています。しかし、現時点では残念ながら、①慢性炎症と、②テロミアの短縮を完全に抑えられる薬やサプリメント等はまだ開発されておりません。

 しかし、これらを抑制できコストもかからない簡単な方法があります。運動習慣です!運動習慣は慢性炎症を抑えるうえに、テロミア短縮の抑制に働くとも報告されています。運動が体力や筋力の機能改善、筋肉量の増加などを介して老化予防に働くことは、運動生理学や分子生物学などの専門分野でも既に明らかにされており、運動習慣はアンチエイジングの王道といっても決して過言ではありません。ちなみに現在、“医学的に運動が禁じられている病態は、各種疾患の急性期と癌などの終末期だけ”と是非、頭の片隅に入れておかれて下さい。しかし、残念ながら車社会の我が国では、小児から高齢者まで総じて運動不足気味で、これが生活習慣病の大きな誘因となり、老化を加速させています。現在我が国で、健康長寿を大きく阻害する寝たきりの3大原因は、①脳卒中、②老衰、③転倒・骨折ですが、これらも全て運動習慣により予防が可能です。

 では、閉じこもりがちな高齢者もおられる地域の方々に運動習慣を実践していただくには何が必要でしょう。先ず地域の“①福祉の専門家”による健康調査や健康への啓蒙活動が欠かせません。さらに、運動を直接指導する“②理学療法士や作業療法士”のエクササイズに関する高度で専門的な知識と、広く医学的な視野から健康管理を統括する“③看護師”の地域に根ざした活躍が不可欠です。金城大学はこれらのスペシャリストを全て養成できる三つの学部を有し、昨年度には生体への運動効果を探求する大学院も設置されました。これで、本学はまさに、地域に必要とされる健康長寿に特化した大学になったと私は思っております。これらを併せ持つ私立大学は、北陸では本学以外にはありません。

 幸い、金城大学のある白山市はヒトと自然に恵まれ、百寿者の数も全国平均をかなり上回っています。このように恵まれた白山市を拠点に、是非新入生の皆様の力で近い将来、白山市、石川県、さらには北陸を日本一の健康長寿地域にして戴けるよう心よりお願いをして、私の入学に際しての式辞とさせて頂きます。